学校総選挙プロジェクト

社会は私たちの日常と結びついている

株式会社arca CEO/クリエイティブディレクター 辻愛沙子

“テレビで目にするニュース” と ”自分の日常” を近いものと感じられる人は、この国にどのくらいいるのだろうか。

政治家の汚職、性暴力、国際間競争、少子高齢化、環境問題、ジェンダーギャップ・・・。社会にはあらゆる課題が溢れている。その中の多くは決して ”テレビの中の出来事”ではなく、私たちの日常の積み重ねの上に表面化してきた課題なのだと思う。

日本の上場企業における女性役員の割合

たとえば内閣の男女比ひとつ取っても、企業の役員やリーダー層の男女比と、はたまた中学高校の学級委員や生徒会長の男女比と、家庭内で厨房に立つ男女比と、それぞれ緩やかな延長線上で繋がっている。海洋汚染等の環境問題と今朝飲んだコーヒーのプラカップだって、決して無関係じゃない。

社会は私たちの日常と、強く、深く、結びついている。

資本主義を前提とした競争社会を生きる私たちは、少しでも良い大学に、少しでも良い就職先にと、日々のやるべき事に追われ忙殺されてしまいがち。それだけではなく、家賃の振込や電気代に携帯代、パートナーとのコミュニケーションに家事に育児に友人関係、SNSでの情報発信・・・。時間の流れが日に日に早くなってくる。そんな日常の中で、“今社会で何が起こっているのか”、ニュースの節々にまで目を光らせて把握し、分からない事があったら調べ、都度都度学び考えている余裕は実際問題中々ない。私たちは、自分の人生を生きる事で精一杯なのだ。

だけれど先述した通り、社会は私たちが生きている日常と深く結びついている。ずっと変わらないものだと思っていた社会も常識も、時代とともに着実に変化し、それとともに私たちの日常も変わっていく。

かつて髷を結い和服を身に纏うのが当たり前だった時代から、美容院で髪を染めジャケットを着るのが日常になったように。

かつて女性は参政権を持たず就労の自由もなかった時代から、女性たちが自分名義の口座を持ち、好きな仕事に就きやすくなったように。

当たり前に変わっていったように思えるこれらの出来事も、いつぞやの誰かが自分たちの手で変えていったものなのだ。

この令和の時代でも、そうやって変わっていって欲しいと願う慣習や常識はまだまだ沢山溢れている。社会のあちこちに根を張っている差別や悪習は中々すぐには変わらない。

だからこそ、この時代を生きる私たちは、自分たちの時代を自分たちの手で見直して変えていかなければいけない。自分たちの明日のためにも、未来を生きる誰かのためにも。

辻愛沙子

なんだか堅苦しい話になってしまったけれど、なにも革命を起こそう!なんて気合いの入った事をしなくたって良い。あくまで”日常”に感じた違和感やモヤモヤをそのままにせず誰かと話してみたり、ツイートしてみたり、ほんのちょっと行動に起こしてみたり。そんなプラスαの積み重ねで、十分見えてくる社会は変わってきたりするものだ。深層まで学んで知らないと語っちゃいけないだとか、本当に分かっていってるのかだとか、そんな声は気にしなくたっていいと私は思う。誰だって知らない事の方が多い。知ろうとするその一歩、考えようとするその一歩が、社会と日常を結びつける大事なきっかけなのだと思う。

そう考えると、日常で感じるモヤモヤや違和感も、新しい未来を作るきっかけのように思えてくる。最近話題のアフターピル(薬局で購入できるようになるかもしれないという報道があったばかり)や不妊治療の保険適用もそうだ。社会は、確実に変わっていく。

選択的夫婦別姓の導入や、政治経済でのジェンダーギャップの改善も、1日でも早く前進して欲しいものだ。

辻愛沙子プロフィール

辻愛沙子

株式会社arca CEO
Creative Director

社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

https://arca.tokyo/

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